食物連鎖の中で、一部の生物が増殖もしくは減少すると自然界のバランスが崩れます。その実例を紹介していきたいと思います。
プランクトンによる影響
赤潮
植物プランクトンが異常な速さで増殖していくと、水が赤く染まる赤潮という現象が発生します。赤潮が発生すると、増殖した植物プランクトンを動物プランクトンが食べて増加します。動物プランクトンは水中に溶けている酸素を消費します。一気に増加した動物プランクトンの影響で、酸素が欠乏する現象が発生し、魚たちが死んでしまいます。
植物プランクトンが増殖する原因は、私たちが使った生活排水が原因です。生活排水には、栄養分が多く含まれており、水中の栄養分が増えます。その栄養分を使って、植物プランクトンが一気に増殖するのです。
青潮
赤潮が発生し、大量のプランクトンが死ぬと水中の下層、底層に沈んでいきます。底層で死骸が微生物によって分解されますが、このとき水中に溶けている酸素が大量に消費されます。
酸素濃度の低い水塊 (貧酸素水塊)ができて水中の表層に上昇します。貧酸素水塊には嫌気微生物が優位になります。嫌気微生物の嫌気分解により生じた大量の硫化水素などが貧酸素水塊に含まれます。貧酸素水塊が大気中の酸素と反応して青色から白濁色に水面の色を変色させます。硫化水素は腐卵臭が発生し、生物が棲めないまたは棲みにくい環境になります。赤潮と同様に魚の大量死を招き、死滅する等の被害が発生します。
地球温暖化
人類の活動が自然に大きな影響を与えています。地球温暖化もその一つです。地球温暖化は地球環境だけでなく、生物の生態にも影響を与えます。
とある実験について紹介します。
実験の材料として登場する生き物は、動物プランクトンのミジンコと、植物プランクトンのイカダモであり、条件を制御してフラスコの中で培養し経過を観察します。
実験条件は二酸化炭素濃度が高い環境下で、培養して実験します。二酸化炭素が多い分、植物プランクトンは光合成を行い一気に増殖します。一般的に考えると植物プランクトンが増殖したら、動物プランクトン(ミジンコ)も増加すると思われます。しかし結果は、ミジンコの成長スピード遅くなりました。
植物プランクトンを調べたところ、二酸化炭素高濃度状態で培養すると炭素比の割合が多く、リンが少ないことが分かりました。人間も栄養が偏ると健康に良くないのと同じように、ミジンコにとっても栄養の偏りは生長に影響するようです。
1種類の植物プランクトンではなく、3種類の植物プランクトンとミジンコを同条件下で培養したら、ミジンコの成長スピードが改善されたそうです。
このように生物多様性があると、自然環境のバランスを整えられると考えられます。
ミジンコが多く棲んでいる場所
水田
昔は水田で多くのミジンコを見かけたというお話を聞いたことがありますか。水田は生物多様性が高いと言われており、生物にとって棲み心地がいい場所とされています。しかし、近年その生物多様性が低くなりつつあります。
農薬を散布する事によって、水田に棲む生物たちに悪影響を与えていることが分かりました。論文によると、農薬の魚毒性分類が3段階あり、その中でもB類とよばれる3段階中、中間の魚毒性分類にあたる農薬を使用して影響を調べたところ、ミジンコなど甲殻類に対して高い毒性を示したそうです。
人間の行動によって、生物や自然界に大きな影響を与えることがあります。
私たちは、自然や生物とどのように関わっていくのか、考え続けなければいけません。
「参考文献」
ミジンコの生態に見る自然環境の変化について
農薬製剤の数種淡水産動物に対する毒性-VIII
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aquaculturesci1953/19/3/19_3_103/_pdf
各種肥料がミジンコの繁殖に及ぼす影響に就ての実験 -I
https://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan1932/20/10/20_10_873/_pdf
地球温暖化が食物連鎖に影響 – 生態化学量論の視点から
https://www.chem-station.com/blog/2012/02/—2.html
補足
生物多様性が豊かだと何がいいのか?
生物多様性がある(豊か)というのはどういう状態を指すのでしょうか。同じ種のなかでも違いが生まれ、多様性があることで環境への変化に強くなる(病気が蔓延したときに、遺伝的にその病気に強いものが現れる可能性が高くなるなど)。種間の違いが多様であるほどシステムとして安定し(複数の昆虫が、受粉を助ける(ポリネーター)役割を演じることで、ある特定の昆虫が地域的に絶滅しても、果実がつかなくなるリスクが減る。
生態系のつながり、連続性があればあるほど、気候変動(気温や降水量の変化)などの大きな変動の中でも、より極端な変化に見舞われない、生態系や水循環などの安定的状態を維持する可能性が高まります。